さて、これからこの国は戦争を起こす国となり、物資は困窮し失業者が街にあぶれるだろう。
 
 そんなことはさておき、出会い厨というか、時々会う女の子とご飯。後に「スイカちゃん」と呼ぶことになるその子は、出会いしなすごい不機嫌。でも、スイカちゃんはよく不機嫌になるのは知っていたので、ニコニコとデート。

 女の子は猫氏の雑なご飯の誘いにぷりぷり怒っていた。

「なんで計画性が無いの? おかしくない? パンケーキ食べたいって言ったのに何でこの待ち合わせ場所なの? わたし人ごみ嫌いっていったのに何で人が多い場所へ行くの?」

 とおかんむりだ。

 なるほどなあ、たしかに、大切な相手だったら無計画に誘ったり、「パンケーキ食べたい」って聞いて、簡単な下調べだけではなくちゃんと予約を取ったり、待ち合わせ場所も気にするよなあ。たしかに粗雑に扱ってたなあ。

 なかなか街にパンケーキ屋さんというものはなく、しばらくうろうろ。猫氏はこういう時間が好きなのだけれど、

「あなたは好きかもしれないけれどわたしはこういう時間が嫌いなの、あなたのスキをおしつけないでくれませんか?」とおかんむり。

 でも楽しくにこにこ歩く猫氏。

 結局、最初から僕が行きたがってた古くていなせで素敵な古いビルの9Fの喫茶店に。女の子から見たら、猫氏は本当にいらいらしたという。うろうろ、目的もなく、だらだらし、怒られて笑い、冴えない案を出して、結局ここかい、みたいな。

 スイカちゃんの言う事はものすごく納得でもある。
 「わたしをちゃんと扱ってほしい」という希望だ。
 本当に敬意があるなら、無駄に歩かせたり、ちゃんと予約を取り、もっと丁寧に扱うべきだと。
 そうよなあ。出会い厨ってなあ。会って、逢っての繰り返しで、その出会いを粗雑に扱ってしまうか。

 バナナパンケーキプレートが出てきた。それを食べて、女の子の機嫌がみるみるよくなっていく。自分でも「わたしは心が童貞でチョロいから、すぐ機嫌よくなる」という。

 「見せたい私を見てほしいの。見せたくない本当の私は絶対に見せたくない。見せたい私は大切な私だから、ちゃんと大切にされたいというのに。
 まあ? あなたみたいな人間に大切にされたいとかもうないですから。ありえない。恋人には絶対にならないじゃないですか。」

 といい、

「恋人欲しいー……」と言う。

「見せたくない私も見せてかないと、恋人って作れないんじゃないの?」と口をはさむ猫氏。

「絶対いや」
「なんで?」
「なんで恋人に見せたくない自分を見せなきゃいけないんですか。わたし見せたくない自分嫌いなんです。一番いい私をみてほしいし、いつも見せたい自分を見らせられるよう努力する」
「気がつまっちゃうんじゃないかなあ」
「大切に扱おうとする努力もできないんですか?」

 その女の子は、ティンダーで彼氏を探している。
 結構マッチングし、週に3人くらいであえている。で、やりとりし、実際に会い、ホテルに行き、ホテルに行き? セックスして、ひどい男に会って、男にイラつく。

 猫氏も(ティンダーであったわけじゃないけど)そのうちの一人で、セックスをした事がある。
 女の子にとっては「ひどい男」に分類される方だろう。

「あー、彼氏欲しい。愛されたい。彼氏が出来たら、彼氏にエスコートされたい。そのエスコートに、最大限のすてきなリアクションをしたいの。」
「自分から好きになったりしないの?」
「私みたいな奴が愛したらだめじゃないですか。ブスが人を好きになったら無様じゃないですか。そういうの嫌なんです。だから誰でもいいんです男なら。愛してほしいです。選り好み絶対しません。愛されたい。エスコートされたい。デートを計画されたい。」

 女の子は、初めての彼氏が悪くてだらしない男だった。
 ゴムをつけない雑なセックスを愛と思ったりしたり、強い言葉を「愛ゆえにいってくれてる」と思ったり、前の恋人と別れてなかったり。

 そんな男に捨てられて、次の恋愛に動きたいらしい。

 ティンダーの男たちは、女の子に出会って、粗雑に扱い続ける。ひどい男と出会ったトークの宝庫だ。

「今日機嫌が悪かったのも、昨日会った男が最悪でいらいらしてただけだから」といいつつ、その男からデリヘル扱いされたことをぷんぷんと怒っていた。本当、短絡的な男性が多いんだなあ。

「童貞もいやなんです。その年齢まで女性と肉体関係が無いってコミュニケーション能力に問題ありすぎるじゃないですか。絶対いや、気持ち悪い。本当に好きな女の子とセックスできないとか何ですか?本当に好きだとセックスするんですか?本当に好きってなんですか?なんでセックスなんですか?
 わたしは、性欲は絶対彼氏にぶつけたくないです。わたしを本当に大切にするなら絶対セックスなんかするわけないじゃないですか。目的が無い。性欲処理なら私じゃなくてセフレや風俗に行けばいい。子供が産みたい、家族が欲しいなら、ちゃんとそう言ってセックスしてくれればいいのに、何なんですか?」

 そういいつつスイカちゃんは昨日も、おとといも、1週間前も、知らない男とセックスして、イラついていた。

 猫氏も、スイカちゃんと3か月前くらいにセックスした。

 セックスが終わったとき、「なんで? むかつく。なんでセックスなんですか? 本当に嫌だ」と言って枕をベッドの上でぶん殴っていた。泣きながら、何度も何度も。
 猫氏はその時ベッドの上で、にこにこと笑っていた。

 ぺらぺらとおしゃべりし、ずーっと話をし、喫茶店を出、女の子の定期のきく駅までふらふら歩きながら一緒に帰る。

「かわいい、って、なんで言われなきゃいけないんですか?なんで容姿を評価されなきゃいけないんですか? たとえば出会い頭に驚いたように言うならわかるんですリアクションだから、真実だから、素のリアクションだから。
 なんで帰り際に可愛いって言われなきゃいけないんですか?
 今日1日あって、ご飯食べて、いろんな話をして、最後にかけられる言葉がなんで『可愛い』なんですか? 何を話してきたんですか? わたしの性格や人格の話をして、なんで結論が可愛いなんですか? 何の時間だったんですか?」

 女の子は一本筋が通ってるなあと思った。
 それをはっきりと口にして、言葉にする。でもこの言葉は、彼女が本当に愛された時には言えない。なぜならその時見せるのは「見せたいわたし」であって「見せたくない私」が口にしているこの言葉たちは、愛する男には絶対に聞くことができない。もったいないなあ

 やっぱり最初の恋人が良くなかったんかなあ。その後出会う男出会う男、僕も含めて、その女の子を傷つけ続けて。

 彼女は「私みたいな女が人を愛したくない」、「でも、愛されたい。愛されたその時には、最大限の愛を返したい」。

 女の子がパンケーキ食べてる姿は可愛いんだけれど、それを伝えたらきっと、スイカちゃん、傷つくんだろうなあ。パンケーキを美味しく食べる姿は、自分が見せたくないものだろうから。

 魂含めてかわいいんだけど、そう思われるのが、きっと嫌なんだろうなあ。

 戦争が始まる。参院選がおわったら、きっと戦争になるだろう。死者の出ない戦争がはじまる。そんななか、今日であった女の子は、こんな感じだった。

 この子とはその後しょっちゅう合うことになる。
 次には「スイカちゃん」の由来もあわせてお伝えいたします。