美人がやってきた!

 久々の出会い厨したけれど、横断歩道の向こう側からもわかる美人だ。それも、強い美人。
 黒を基調にした強い美人が着るような、アラビッシュなアウター。眼力のつよい! 美人! つよいのが来た!

 「あの、わたし……腐女子なんですよ……」

 強いのに腐女子!

・・・・・・

 猫氏がいつも使う、新宿の隠れた老舗名店でランチをする。そこで美人のオーラを放ちつつも「実は私、処女で……」という話を聞いている。
 ちょうどこの日は、写真家のアラーキーがモデルに告発されていたり、役人の「おっぱい見せて」音声が公開された日だったりして、そんなトークをする。

 強い処女美人は、どこかで自分に自信がなかった。

「自分が処女だという事がコンプレックスで、いわば童貞じゃないですか」

 となやみを語る。
 おっ、これはセックスいけるのか? と思っていたが「でも好きなアイドルのライブは、処女として聞きたいのです!」と熱弁。

 もともとBL小説を読むのも書くのも好きで、そうした尊さを語る一方、今の自分の状況に焦りを感じていたのだった。とにかく彼女はいろいろなものを、熱烈に愛している。

 話がとにかく面白い。猫氏は頭の回転が速く、しかし焦っている美人の話をほくほく顔で聞く。新宿デートの定番でおすすめなコースも行く。

 新宿南口に、電車が見られるテラスがあったして。お金もかからないし、景色もいいし、天気もいい。そこでいろいろな話を聞く。
 彼女は、ある種の破滅願望があるのか。男性アイドルグループの一人を熱烈に推しているが、その推しざまが、「わたしがバイトしてゴミ出しをして、ゴミ捨て場で途方に暮れている時に、その人が現れて、『みじめだな』と見下してほしいんですよ!!」と熱弁。

 で、そのアイドルが全国ツアーをするらしく。そのツアーの最中は処女でいたい、と。とはいえ、性経験がないわけではなかった。

「バイなんで、女とセックスはしたんですけどねー」

 と。ラブホも数回女子会というテイで女の子とセックスしに行ったことがあるという。

「ただ女とセックスすると、複数人だったんですけど、露骨に嫉妬とかあるんですよ。それがすごく面倒くさくて……。気持ちいいとかはまああるんですけど、指兄弟とかなるんですよ。指兄弟かあって……」

 ラブホ見学もかねて、ふらふらとラブホ街を歩いたのち、歌舞伎町の喫茶店でゆったりする。利発で経験も豊富で、でも気を張っている女の子。
 美人なのに、なんだかかわいいなあと思いつつ、「処女なんで、なんとかさっさと処女捨てたいんですよ!」というので、処女捨てを依頼される。

 だけどその処女捨ては、そのアイドルの全国ツアーの終わる夏以後だという……。

 夏かあ。

 夏まで処女。処女のままアイドルのステージを熱狂し、捧げる。それは青春の変形なのかもなあと思った。早く捨てたい青春。でも矛盾するように、大切にもしたい青春。

 そんなわけでうれしい事に、セックスの約束を取り付ける出会い厨なのだった。未来にセックスがある関係って、悪くないなあと。それは希望って言うんじゃないかなあ。希望。生きていくうえで、希望って大切だよなあ。